2016/05/05 訪問
その昔、利根川は度々氾濫し、水害をもたらしてきました。
蛇のように曲がりくねっていることが被害を大きくしていましたので、
100年前の人々は、これを真っすぐにして両岸に巨大な堤防を築きあげました。
結果、現在のように完璧に治水された、ほぼまっすぐの大河が出来上がったわけです。
その際、曲がりくねっていた利根川をまっすぐするという工事だったため、
もともと茨城県だった場所が分断され、千葉県と陸続きになってしまった場所があります。
茨城県の取手駅からすぐ南にある「小堀地区」です。
取手駅付近の地図です。
赤線は県境で、上が茨城県、下が千葉県になります。
県境はもともとの利根川の川幅の真ん中を基準にして決められましたが、
前述の治水工事で利根川が蛇行しているのをまっすぐにして、元の川の部分をほとんど埋めてしまったので、
結果、千葉県とくっついてしまった形になっています。
そして、新しい大河によって千葉県へ分断されてしまった住民が、
中心街といえるべき取手に行くための交通手段ということで、
100年ほど昔の治水工事と同時期に渡し舟がはじまりました。
今回、その渡し船の場所を訪問してみました。
厳密にいうとは発着の土地は両方とも茨城県で千葉県ではありませんが、
少し歩けば千葉県である珍しい立地ということで、とりあげてみました。
ここは「取手緑地運動公園」。
取手駅から河川敷方面に歩くだけで到着します。
堤防から続くスロープを下がっていくと、この看板が目に入ります。
小堀と書いて(おおほり)と読みます。
案内等は松戸にある「矢切の渡し」よりは、はるかにわかりやすいです。
のぼりを頼りに、川のほうに歩いていきます。
よく見るとのぼりに折り目がついており、洗ったばかりであるように見えます。
のぼり自体もかなりきれいであることからして、
最近になって宣伝的なものに力を入れているのかもしれません。
川のほとりに小屋が建っていました。
停留所というべきでしょうか。
そして小屋のすぐ近くに船着き場がありました。
その設備は、これでも「矢切の渡し」と比べ物にならないほど良いです。
小屋の中に展示されていた、小堀の渡しの歴史。
2014年で運航100周年だったそうです。
運航図と時刻表。
3つの船着き場を1時間に1周する感じです。
もし乗りたいのであれば、毎時20分に合わせて、船着き場に移動するようにするといいと思います。
なにせ時間を潰すものが周りに無いので・・・
しばらく待っていると、船がやってきました。
矢切の渡しは手漕ぎ船に船外機をつけただけのものですが、
こちらはちゃんとした船です。
乗船開始。
自転車と原付は無料なのですが、
原付の幅があるので、この橋を渡るのが怖いと思います。
乗船料は対岸まで100円、1周するなら200円。
自転車、50ccまでの原付は1台まで無料。
ただし、最近のロードサイクルにはスタンドが無いものがありますが、
スタンドなしですと乗れません。あしからず。
観光乗船を意識しているのか、結構立派な領収書がもられます。
「矢切の渡し」は乗るときに200円渡しておわりです。
乗っているときの姿勢には注意があり、とにかく座っていないとダメ。
少し移動するぐらいならいいが、立ったままはアウト。
なので、前方の小部屋に座るのが基本なのだが・・・暑い。外で屈んで乗るのがオススメ。
出港!
トラストフレームの鉄道橋に向かって進んでいきます。
なんかエッシャーの騙し絵みたいな写真になってしまいました。
オレンジの柱は4本全部橋より手前にあります。
出港から5分程度で到着。
「取手ふれあい桟橋」の渡船場です。
今回ここから乗船する方はいらっしゃいませんでしたが、
位置からして普段から利用者が少ない船着き場かなと思います。
ようやく対岸の小堀地区へ向けて長い航行がスタート。
船の速度は無理しない程度に出ているぐらいで速いとはいえませんが、それでも風が気持ちいいです。
一応観光乗船であることから、できるだけ長く船に乗せてあげようという配慮があるのかもしれません。
対岸の渡船場が見えてきました。
そして到着。
対岸の設備と比べると微妙な感じですが、れっきとした船着き場になっています。
お客さんのうち、親子連れが自転車と一緒に下船しましたが、数分で戻ってきました。
まあ、そこは察してください。
矢切の渡しと違い、定刻で出発ですので、ひたすら時間をつぶします。
船室は当然ながら空調はないので、外に出て待機。
10分ほどで船は出航、取手に向かいます。
水流が逆になったためか、結構パワーを出している感じがしました。
そして最初に乗ったところへ帰還。
乗ってから戻るまで、時間にして約40分ほど。
ただし、それのほとんどが待ち時間なので、快適かというとちょっと微妙です。
ですが、このあたりには手軽に船に乗るタイプのレジャーはないと思うので、
時間さえ合えば気軽に乗れるのが良いかなとおもいます。
では千葉県に戻り、対岸の渡船場周辺はどんな感じかみてみます。
河川敷に沿って続く道路のわきに「小堀の渡し」の看板があります。
この場所付近に駐車場は用意されていませんので、
車で来たのであれば、基本は取手側の公園に駐車して、乗船する形になると思います。
駐車料金は無料です。
ちなみにこの写真の左側に見えている建物は「成田つくば航空専門学校」で、
ここの目印になるかなと思います。
もちろんここは茨城県取手市で、成田でもつくばでもありませんが・・・
看板のある場所から堤防上の道路を歩いていくと、あたり一面草原になっている場所に出ます。
堤防からのびている道路の先に小屋があり、それがさきほどの渡船場になります。
周囲は堤防の上の道路ぐらいしか自転車で漕ぐところがありませんし、時間を潰すところもありません。
乗ってきた船が出ちゃうと次は1時間後なので、暇つぶしには酷な場所かなと。
まあ、取手市もチケットやのぼり旗の凝りようからわかるとおり、
この渡しは100年の歴史をもつ渡し船を味わうためのものであると認識しているわけですし、
実際にこの近くにお住まいの方でないと、交通の利便性等でのメリットがありません。
とまあ、こんな場所でした。
前レポの富田渡船のように、世の中が豊かになるにつれて、
交通手段の1つがいつのまに消えてしまっていたりすることもありますので、
油断しないように、まだまだ現役のうちに乗っておいてみてはいかがでしょうか。
以上、小堀の渡しをお送りしました。
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