File 243 ウイング土屋

成田市最大の商業都市と化した「イオンモール成田」周辺。
その地域にまつわる空港と鉄道の歴史とは?

ウイング土屋
【所在地】千葉県成田市
【交通手段】車かバイクで。
【HP】ありません。

2015/2/28 訪問

今年の3月14日、北陸新幹線が開通します。
来年には北海道新幹線が開通予定、
4年前(東日本大震災があった年)には九州新幹線が開通しており、
リニアカー以外の鉄道網が完成に近づきつつあります。

そんな高速鉄道計画の中、着手までしたのに失敗した路線「成田新幹線」がありました。
その成田新幹線のために作られた遺構が「ウイング土屋」周辺にあるという。
先日TV放映もあったということもあり、さっそく訪問してきました。



こちらは「イオンモール成田」のすぐ隣にある「ケーズデンキ成田本店」です。
同じぐらいの大きさのヤマダ電機がすぐ隣にあるという最悪の立地で、
共倒れしないのが不思議です。どちらかが引けばいいのに・・・



そのケーズ電気の脇の道路が、
鉄道の高架が見えるほうに続いています。



そのまま道路を直進すると、道路が円形になっています。
おそらくここは駅前によくあるバスターミナルになる予定だったと考えられます。



そのバスターミナルから東のほうにすすむと・・・



すぐに根木名川が流れており、
使用しないと思われる橋げたが遺されています。



成田駅方面をみてみると、高架は途中でぶつ切りになっています。
おそらく「成田新幹線」に用意された高架だったと思われます。

成田新幹線計画は1986年に中止になっていますので、
おそらく築30年ぐらい経過したものと思われます。



高架の脇は歩道が整備されていますので、
それに沿ってイオンモールのほうに進んでみます。



しばらくは他愛のない、コンクリートの骨組みが続きます。



コンクリ骨組の下は駐車場になっています。

イオンモールのものか、鉄道や空港の従業員かは不明ですが、
出入りはほとんど無いものも、大量の車が駐車されています。



半ばぐらいまで通り過ぎると、途中で形状に変化が出てきます。
外側にせり出すように足場のようなものが出てきています。
それはまさしく、駅のホームのような雰囲気が感じられます。



下のほうから見てみると、天井がきっちり作られています。
どうやらここに仮称「土屋駅」が予定されていたと思われます。



しかし、屋根があるところもあれば、
鉄骨が露出して上を向いたまま、手をつけられていない場所もあります。
こちらもおそらく1986年から着手されていないと思われます。



さて、この場所について、少し書いてみようと思います。

この記事のタイトルに挙げている「ウイング土屋」ですが、
これは何を指している単語かご存知でしょうか?

実は「地名」です。

たとえばイオンモール成田の住所ですが、
「千葉県成田市ウイング土屋24」なのです。

もともとこの地域は1970年代、
成田空港への資材輸送や、給油のための基地として機能していました。

しかし1983年に燃料運搬がパイプライン化されたため、この地域が不要となりました。
この土地を別の用途で利用できるように1985年に更地になり、
商業地としての開発勧誘が行われました。

そのエリア全てが「ウイング土屋」というわけです。

ウイングという名称から想像できるとおり、
空港へ向かうための新幹線の沿線となることが予定されており、
この場所への駅の造成計画、つまり仮称「土屋駅」の計画があったようです。
その当時としては土地としての将来性がかなり高いものであったと憶測できます。

しかしその直後の1986年、成田新幹線計画の断念が発表されました。
おそらくこの土地の持ち主だった、成田空港関連会社にとっては寝耳に水の出来事だったと思います。

新幹線計画は中止になったものも、仮称「土屋駅」建造の計画は続いていたようですが、
低迷したあげくバブル崩壊のあおりを受けて、この地域一帯は1996年頃に開発中止。

命運尽きたかと思いきや、まさかのウルトラC大逆転劇、
大企業イオンモールがこの土地を引き受けて、
2000年にこの土地をほぼ占有する巨大ショッピングモールがオープン。
現在にいたるわけです。




イオンモールの駐車場から「土屋駅」を眺める。
左のほうから続いている高架はJR、上のほうは京成スカイアクセス線です。



写真を撮っていると、高架の一番上を京成スカイライナーが通過していきました。



グーグルの地図で高架の上を見てみると・・・
京成の線路は一本だけで、どうも空間が多めに取られている印象です。
駅を作るスペースは十分にあるように見受けられます。
もう一本、JRの線路は上側にすれすれに引かれています。



そしてJRの成田エクスプレスも通過。
この高架の中、どこを通るかというと・・・



おお、こちらは普通に駅構内を通過しているように見えます。
JRが土屋駅を作るのが一番簡単だと思うのですが・・・


この仮称「土屋駅」。今後作られるかどうかですが、
残念ながら、現状では限りなくゼロに近いと言えます。

まず、JR、京成のどちらが駅を作ることを検討するのか、って話になりますが、
JRは成田新幹線計画から降りて、京成スカイアクセス線がほぼ引き継いだ形なので、
JRが土屋駅を作るという計画はすでに消失しているわけです。

京成グループが北総線の線路を借りて、成田まで開通させて計画を完成させたわけですが、
なぜ計画を成功させたのに土屋駅が作られなかったのか。
それは事業計画書にて「土屋駅」を作らなくてもよいという許可を得ていたからです。
そのかわり、計画書に載せていた「成田湯川駅」はきちんと完成させています。
京成側としては、もともと計画にないので作る必要がない、というスタンスです。

そもそも、駅を作るということは、売りである高速輸送を妨げてしまいますので、
この路線でお金を稼いでいる成田エクスプレス、そしてスカイライナーの運行にとっては、デメリットしかありません。

よって、JRにも京成にも収益がほとんど見込めない「土屋駅」を作る義理はないわけです。
仮に作るとなると国がお願いし、そのお金は成田市が出さないと作れないといわれています。
その費用は・・・50億円。となると無理ですね。


とまあ、こんな場所でした。

1999年まで不人気だったのが信じられない人気の立地となっておりますが、
それとは裏腹に、駅の建設を求めて争いが続いている、
まだまだ問題をひきずっている土地でもあります。

以前レポした「江原台駅」の件もあり、
京成電鉄が平穏の日々を過ごせるようになるのは遠い未来の話なのかもしれません。


以上「ウイング土屋」をお送りしました。


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