2014/05/02 訪問
1年ほど前のある日。
バイクで旭方面に向かうためにこの場所の近くを通ったとき、
ひっそりと置かれた看板が気になり、その看板を追ってみたところ、
山奥に信じられない建物がある、この場所にたどり着きました。
しかしそれは真冬で路面には雪はなかったが、
あっちこっちに残雪があった日だったこともあり、
その日は場所を記憶にとどめて、そのまま退散しました。
今年の春。
再度訪問してみましたが、残念ながら解放している雰囲気がなく、
近隣の住民に尋ねてみたところ、2012年頃に一般公開されたが、
そのあとはどうなったかわからないとのお話でした。
そして今回。
ようやくその謎の物件の全貌を目にすることができましたので、レポします。
なお、今回の訪問ルートは多古方面からとなりますが、
今後新しい道路が開通します。
その道路が開通すると、成田方面からの訪問が容易になります。
開通はおそらく2〜3か月後ぐらいの話だと思いますので、
その開通にあわせて訪れるのも悪くはないかもしれません。
実は今回の訪問時デジカメのトラブルがあり、
いろいろなカメラで撮った画像が混じっていたり、
今回の訪問時と時期が違う画像もありますが、ご容赦ください。
ちゃんと下調べもしている、ということで・・・
ここは成田方面から道の駅多古へ向かう途中の「染井交差点」。
道の駅多古へ行く場合はこの交差点を右折しますが、今回の物件へは直進します。
染井交差点を直進後、標識通りに進んでいくとY字の交差点があります。
左が香取、右が旭、匝瑳方面になる箇所です。
ここを左に曲がります。
右手に広大な田畑が広がる、田園地帯を走り続けます。
その道の途中に、左のほうの山へ向かう道と分かれている箇所があります。
その分岐の中心をよく見ると、小さな道標があります。
道標には「やすんば自然園」とあります。
道標にしたがって左に曲がって進むと・・・
こんな感じで物件へと導かれていきます。
これを何度か繰り返して進んでいくと・・・
どうやらそれらしき場所に到着しました。
「やすんば自然園」とあります。
その道を進んでいくと・・・
突如石垣で覆われた建造物が見えてきます。
敷地を覆う壁のような感じに見えたのですが、
右側に目をやると、建物も石を積んで作られています。
入口と思われる門は一面が緑に覆われ、異国の雰囲気を醸し出しています。
ここで様子をうかがっていると、管理人と思われる方が声をかけてくれましたので、
この物件に入ってみたいことをお伝えすると気前よく入れていただけました。
緑の門をくぐります。
その先に広がる世界は・・・
目を疑うような景色が広がっていました。
不規則に積まれた石が美しい建造物が並び、
それを草木の色彩が演出しています。
外側から見えていた壁も一見無造作に見える石の積み方に反して、
角がきちんと揃ってみえる形状をしています。
建物を円形の庭園ごしに眺める。
中央の丸い池を中心に、美しいガーデニングが施されています。
この庭園のコンセプトは2つあり、
1つは古代ローマの雰囲気を表現する。
もう1つは蝶が集まるように工夫をこらす。
この2つを基本に、綿密に設計がされています。
その庭園を囲むように作られた石で舗装された道。
修道院の僧が周回して歩き続けるイメージだそうです。
将来的には上の木の骨組みにはブドウを絡ませてたらす予定だが、
残念ながらブドウの生育がよくないそうで・・・
古代ローマの特徴といえば、石垣のアーチ。
3連が視覚的に一番バランスがよいとのことです。
こちらも別の方法でのアーチ。
円形の庭園から階段を降りていくと、
蝶を中心とする生物の生育環境として作られた「ビオトープ」があります。
噴水の水があふれたりすると、こちらのほうに作られた水場に流れるようになっているとのこと。
「ビオトープ」の先に進むと、高台から円と多角形が組み合わされたものを見下ろせる場所に出ます。
ヨーロッパの豪華な庭園は、庭を高いところから見下ろして形状を楽しむ文化があり、
それを再現するために作っているそうです。
メインの建物の裏にはなんと!弓道練習場があります。
ここを通ったときにオーナーが的にささった弓を抜いていたのですが・・・
ふつうに全部的とその周囲にささっていました。かなりの腕前のようです。
で、メインの建物。
天井は透明で、壁はすべて石壁。
この正面のアーチ窓から見える風景は、さきほどの噴水が中心となった円形の庭園。
ここの設計の思想に「蝶が集まる」と書きましたが、
蝶があつまるように、噴水の回りを中心に花が植えてあるそうだ。
それをここから眺められるようにというわけです。なるほど。
弓道場につづく道がある裏口がある壁。
基本は自分の趣味のためにこの庭園と建物を作り上げているわけですが、
撮影スタジオとして貸し出す、個展の会場等の用途も模索している状態だそうです。
もちろんこれだけの庭園を個人として運営するにはお金が必要なわけで、
その収益が運営に少しでも足しになるのであれば・・・と考えているようです。
さて、ここのオーナーについてですが、
建築家としての代表作の一つは、多摩動物公園内にある「昆虫生態園」だそうです。
建物の中は自然を再現した空間に、蝶を中心とした昆虫が飼育されているわけですが、
最大の特徴は、建物を上から見ると蝶の形をしていることです。
グーグル地図で「昆虫生態園」をみてみる
この仕事を請け負ったのをきっかけに、蝶が好きになったそうです。
ここの訪問のベストの時期ですが、
蝶が敷地内にたくさん飛ぶようになる5月下旬〜秋ぐらいとのことです。
夏に再度訪問することを約束し、物件を後にしました。
・・・とまあ、こんな感じの場所でした。
ここまでご覧いただければおわかりかと思いますが、この場所はまだ完成しておりません。
完成に向けて、今もオーナー1人だけで、コツコツと改修を続けています。
オーナーの園内の案内に耳を傾けていると、
広大な敷地の詳細にわたる部分までに、確固たる改修プランを持っているようでした。
それをすべて実現するとなると、建築の仕事に一切かかわったことがない私からすると、
気の遠くなるような話でした。
完成はかなり先の話なのはわかりますが、遠い未来を見据え、
「やすんば自然園」を作り続けているオーナーの表情は幸せそのものでした。
そのオーナーの顔と、建築に関するうんちくを聞きにまた訪れたくなる、不思議な場所でした。
以上「やすんば自然園」をお送りしました。
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