File 217 若松劇場(※閉鎖しました)

かって千葉県に多く存在した、昭和を代表する風俗、ストリップ劇場。
唯一残っていた「若松劇場」が、この9月に突如閉鎖。
その現場をレポ。

若松劇場
【所在地】千葉県船橋市本町2−17−27
【地図】すでにありません。


2013/09/初旬 訪問

かって千葉県には、ストリップ劇場がたくさん存在していたそうです。
某サイトを見る限りでは、総数で33店あったそうです。

船橋市には公営ギャンブルが3つあります。
中山競馬場、船橋競馬場、船橋オートレースとあり、そう離れていない市には競艇や競輪もある。
ギャンブルの街と風俗、特にストリップ劇場は切って離せない存在なのです。

その数あるストリップ劇場の中で2トップといえたのが、
千葉県で最も人気があったストリップ劇場「西船OS劇場」、そして今回の「若松劇場」です。

「西船OS劇場」は千葉どころが関東でもトップといえる人気だったそうで、
昔のここを知っている人の話だと、8000円程度で本番ができたため広く知られていたそうです。
西船OS劇場は1996年頃に閉鎖され、かって劇場があった土地にはマンションが建っています。

前述の33店あった劇場は、時代とともに次々と閉鎖されていき、
2011年頃の時点で残るのは若松劇場と船橋大宝劇場の2つになっていました。

もともと「若松劇場」周辺は遊郭だったので、昔は場所相応の営業が行えていたのですが、
市役所や駅が近いこともあり、周辺のタワーマンションの開発が活発化。
タワーマンションと民家が周辺にある中にストリップ劇場、
という異様な雰囲気が生み出されてしまっていたのです。

もう1つの「船橋大宝劇場」は京成本線の高架化による船橋駅周辺の近代化の影響か、
駅近くに相応しくないのか、摘発の標的になり、そのまま閉鎖されてしまいました。
(現在、建物はライブハウスになっています)

こうしてただ1つ残った、「若松劇場」にさらに追い打ちをかけたのが、
船橋最後の遊郭建築だった「吾妻屋」の火事による焼失。
こうなると「異物」の排除は時間の問題となっていました。

そして、2013年9月10日。
この劇場で公演を終えた踊り子が「給電が絶たれた」とコメントを発信。
その後、若松劇場閉鎖に関する情報が飛び交う状態に。
ただならぬ事態に仕事が終わった後、そのまま船橋に向かい、実際に確認してみました。


私は聖人君子でもなんでもありませんから、
若松劇場には2回ぐらい観に行ったことがあります。
なので、劇場はどこにあるかよく存じています。
京成船橋駅の西側の細い道から市役所方向に歩いていき、
つきあたりを右に曲がる、こんな感じで覚えていました。

覚え方から察していただければと思いますが、
初見では道に迷って訪問できない人が多かったのではと思います。
実際、最初の訪問時の私がそうでした・・・。

前述の「つきあたりを右に曲がる」とこんな感じで、
飲食店が集まっているエリアが見えていました。
それ以外は一般的な住宅だらけです。


このエリアのほぼ中央に位置するのが、今回の目的地である若松劇場。
2年ぐらい前、「公然わいせつ」で摘発され、1年間の営業停止を受けた時、
シャッターが閉まっていましたが、今回は空いていました。

そして、緑のところには踊り子の顔写真が掲示されていたのですが、
それも全くありません。噂は真実でした。



踊る順番が掲示されている香盤表(こうばんひょう)も真っ白。

中を見ると・・・すでに解体開始中。
しかし、このときちょうど12時。
休憩のようで作業は止まっていたので、
思い切って中を見せてもらえないかお話したところ、OKをいただけました。

というわけで入ってみます。



入るとすぐに受付があります。

若松劇場の入場料は5000円ですが、割引券があれば4000円でした。
ほとんどの人は4000円で観ていたんじゃないかと思います。

ちなみに劇場内で写真撮影すると、罰金20万円とられるそうです。


受付を通るとすぐにドアがあったはずですが、すでに取り外されていました。


開演は11:30、終演は23:30。
1クールで5、6人が踊り、それが1日4回か5回繰り返されるとのこと。

客入りのピークはサラリーマンの仕事が終わった後の19時頃だったと思います。
幸いにも私はこの劇場で同僚に会うことはありませんでしたが・・・。



劇場に入ると、すでに取り壊しがはじまっていました。

照明はすでに撤去され、ターンテーブルの上に集めてありました。



別アングル。

当たり前だが、開演中は踊り子を見ているわけです。
で、踊り子がチェンジしている合間は休憩時間で、明るくなります。
このとき、皆が一瞬でもコンタクトをとると気まずい、そんな雰囲気が感じ取れて、
自分も他人と目をあわせないように座っていました。
そのため、よく考えると劇場がどうなっているかなんてよく見ていなかった。

こうしてじっくり見ることができた日が、閉鎖された後とはなんとも皮肉なものです。



人生初、ストリップのステージにあがる。
踊り子からはこんな風にお客さんが見えていたのか。
こりゃビビリの俺は絶対無理だわ・・・

多くの視線が集中する中、御開帳できる踊り子は偉大です。


舞台のすぐ裏。
楽屋があり、すぐ横に上に続く階段がありました。



楽屋。特徴的な長い鏡があります。
ここは比較的空気が逃げない場所なのか、ほのかに香水の匂いが漂っていました。

それもそのはず、9月10日に電気が止まった話があり、
この日はそのわずか5日後なのだから。

そもそも、閉鎖予告や最後の公演といったものはなく、
ある日突然の閉鎖だったわけで、
その5日間でここまで解体されていること自体、衝撃的でもありますが・・・。



階段をあがると、2階も楽屋でした。
こちらにも特徴的な長い鏡がありました。


ここまで見せてくれた工事のおっちゃんに感謝。

とまあ、こんなところでした。

現在の日本の法律では、
ストリップ劇場に該当する建物の新規建築は行えないため、
閉鎖されてしまったら二度と復活できません。

よって、この若松劇場が閉鎖したことにより、
千葉県からストリップ劇場が完全になくなってしまいました。

住宅街の真ん中にある「異物」が駆除できたため、
船橋市としては歓迎しているかと思いますが、
私が思うには、船橋市は逆に保護するべきだったと思います。

高層マンションが並ぶ街並みは美しいと思いますか?
100人が100人、同じ生活を送るのは楽しいと思いますか?

このままだと未来の人は、東西南北高層マンションが並ぶ、
味気ない風景で人生を過ごさなければならない。
それは幸せなのか、不幸なのか。
それは誰にでもわかると思います。
そうならないためには、住宅街の中であっても、
「異物」は未来の人のために残してあげなければいけないと思います。


以上「若松劇場」をお送りしました。


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