File 180 絹横穴群

古墳が多い君津市にある、横穴古墳群。
他の古墳と違いほとんど整備がされておらず、発掘時の雰囲気が味わえる。
はたしてどのような場所なのか?

絹横穴群
【所在地】千葉県富津市絹220(※駐在所の住所)
【地図】googleマップ
【HP】ありません。
【交通手段】JR大貫駅から東へ3キロぐらい、車かバイクで。

2012/01/07訪問

このHPをご覧いただいた方から、いろいろなメールをいただいておりますが、
数日前、今までとは全く違うタイプの方からメールをいただきました。

その方は千葉県在住のオーストラリア人。
なんでも日本の歴史文化財探訪が好きで、
千葉県内でそういう物件を探しては実際に訪問しているとのこと。

そんな中、本物件の訪問を薦めるメールが来ました。
なんでも大貫駅と郡ダムの間に、横穴遺跡群があるとのことでした。

その方の嗜好はやや廃墟物件寄りなのですが、結構マイナーな物件を訪問されているので、
この物件も結構当たりなのかなと思い、早速訪問してみました。


まず到着したのは目印である、「千葉県富津警察署 吉野駐在所」。
この駐在所の裏山が横穴古墳群になっています。


駐在所から東方向へちょっと歩くと、農地と垣根の先にぽっかりと穴が空いています。
走っていて駐在所に気がつかなくても、こちらで気がつくかもしれません。


駐在所の脇に物件への坂道がありますので、そこを登っていきます。
おそらく車やバイクで来た場合、この坂に駐車しても大丈夫だと思います。


ちょっとした原っぱに出ます。
周囲の状況からして、発掘団の車両駐車場になっていたものと思われます。


岩肌に彫られた石段を登っていきます。


石段を登ったさきにあった説明板。

絹横穴群は2群11基あり、さらに1番と10番には文字が彫られていると。
とりあえずこの説明板の情報と、
現地で実際に調べた位置関係で地図を作ってみました。



こんな感じです。

この穴が1番、というような資料はありませんので正しいかわかりませんが、
状況からして左から穴の番号が振られていると思われましたので、図のようになりました。
上部の緑の部分は森林ゾーンで藪漕ぎが必要です。
坂となっているところは階段等が無いので、5mぐらいの急な坂を気合で登る必要があります。
なので全部の穴を見ようとするなら、それなりの装備が必要かと思います。


説明板のところから森林ゾーンに入ります。
獣道のようなものは無く、穴を見つけたらそこに見に行け、そんな感じです。


まず、3番と4番です。
最初の方はスルーして、1番から見たほうがよいです。

ちなみに1番以外の穴はきれいに泥を取っていないので、
天井に頭をぶつけると、土の粉が降りかかって大変なことになります。


森林ゾーンから西(左)のほうに進んでいくと、
鉄筋で組まれた屋根のようなものが見えてきます。


これが1番のお墓です。
説明板には11基あるとのことですが、見学用にきれいに整備したのはここだけと思われます。


お墓の中をフラッシュ。
長柄で見たものよりかなり小さく(File 004 長柄横穴群を参照)、
大の人間がギリギリ収まるぐらいで、中では全く身動きがとれないと思います。
ま、ここに入る人は生きていることを想定していないので、広さを論議するのは無意味かもしれませんが。


さらにこの1号のお墓の左壁には、文字が彫られています。
説明板によると、
右が「大同元年」
左が「許世」と書いてあります。

右の「大同元年」は年号のことで、西暦にすると806年。
この絹横穴群は約1200年前のお墓ということになります。

左の「許世」はそのお墓に眠っている人の名前、ってことです。
「許世」は古くから房総で有名な氏族だったそうです。


こちらは坂の上にある、5番,6番,7番のお墓です。


がんばって登ってみて中を観てみましたが、ご覧とおり、
掘った残りカスの掃除が終わっておらず、中をじっくり見るには酷な状態です。


次は森林ゾーンを抜けて、東方向に進んでいきます。


説明板にあった2群というのは、森林ゾーンと岩肌ゾーンの2つに分けているのかなと思います。
その岩肌ゾーンには3つのお墓があります。
その中の1つが、冒頭の画像で道路から見えていた巨大な穴です。
他のお墓は高さが140cm位でしたが、こちらだけ180cmぐらいありそうです。

一応重要な文化財のようなのですが、中をのぞいたら道具置き場みたいになっていました・・・


続いてその脇にある2つの穴。
位置関係からして、右側のほうの穴に、
説明板にあった「水」という時が彫られているようなのですが、確認できず。


とまあ、こんな感じでした。

ここで発掘したものが放置される理由はいくつかあるかと思いますが、
単順に立地が悪く、遺跡を整備したとしても見に来る人が少ないと判断されているのかもしれません。
そういったところにはお金をかけずに、
他の主要遺跡である「弁天山古墳」「稲荷山古墳」のような場所に注力していると考えられます。

しかし、同様のタイプの「長柄横穴群」では整備がほぼ完了したようで、
非常に見学がしやすい場所に変貌をとげています。
古墳=鍵穴みたいな形で上から見下ろすと形がわかるタイプという認識ばかり浸透していますが、
横穴遺跡はストレートにわかりやすい。こちらのほうが見る側としては楽しいと思います。

いつの日かこの遺跡の整備に予算が下りてきれいになる可能性があるかもしれませんが、
藪漕ぎをしてありのままの形を見てみたいという方には非常に良いスポットかなと思いました。

以上、絹横穴群をお送りしました。

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