File 178 幻の江原台駅

佐倉の風車の近くにある住宅街、江原台。
かってこの近くに駅を作る計画があったが、現在は頓挫しているという。
はたしてどのようなところなのか?

江原台駅建設予定地
【所在地】千葉県佐倉市江原台2丁目15−20周辺
【地図】googleマップ
【HP】ありません。
【交通手段】車かバイクで。

2011/12/24訪問

千葉北部を走り、上野から成田空港までを結ぶ京成本線。
京成本線は約2キロごとに1駅が設置されており、
平均3〜4キロの総武線等と比べると、沿線に住んでいる住民の利便性に配慮したかのような印象があります。

しかし、この駅間2キロという法則が成立しない区間が2つあります。
1つは、京成成田駅から空港第2ビル駅までの約7キロ。
こちらは成田空港の滑走路の下なので駅が必要ないという、単純な理由があります。

そしてもう1つは、京成臼井駅〜京成佐倉駅の間。
距離は調べたところ約5キロと、普通の京成本線の駅間距離の2倍ほどあります。
実際に電車に乗ってみるとわかりますが、この区間は停車ペースを崩された感じがして、
かなり長く走っている感じがします。
なぜこの区間だけ、通常と違って距離があるのか。

それはもともと、その間に駅が出来る予定だったからです。


佐倉の観光地といえば、佐倉城址公園周辺。
千葉どころが関東でもトップレベルの広さを誇る、通称「歴博」。
歴博は非常に広く、ゆっくり1つずつ観ていくと時間より体力が持たないです。
完全に展示内容を頭にたたきこむには最低2日かかるのではと思います。

他の観光地といえば、印旛沼周辺の自然を生かしたレジャー関連かなと思います。
その起点ともいえるべき場所はここ、「佐倉ふるさと広場」かと思います。


この場所の最大の売りは、オランダ風車「リーフデ」。
春には風車周辺の田畑一面がチューリップでいっぱいになり、
世界一の生花市場を持つオランダの雰囲気を味わうことができます。

前の写真の建物の中では青果市場や特産物販売等を行っているほか、
自転車のレンタルができ、印旛沼の湖畔を走ったりすることができます。
自宅には自転車が無い上、信号が多く、混雑が激しい市街地に住んでいて思いっきり走れるところが無い!
という方には非常に良い場所だと思います。


この「佐倉ふるさと広場」の向かい側がどうなっているかというと・・・


春に使われる臨時駐車場と田畑が広がっている先に、
京成本線の線路をはさんで住宅街が広がっています。

この住宅街の名前は、「江原台」といいます。
早速この住宅街に入ってみます。


交通量の割りに道幅が狭い、国道296号を佐倉方面に走っていくと、
途中にガソリンスタンドが近くにある交差点があります。
対向車線から右折待ちの車で渋滞がひきおこされることが多い場所なので、
通ったことがある人は、すぐにどこだかわかると思います。

ここを左に曲がります。


曲がると、国道である296号より道路幅が広い場所に出ます。
ここが江原台になります。


しばらく進んでいくとT字路になりますので、ここを曲がります。
メインの通りというべきこの道路は、道幅が広いままここに通じていて、
バスが通ることを想定していたかのように見えます。


曲がると、いかにも駅前ロータリーという感じの広場が見えてきます。
しかし・・・・



広いだけで何も無い空間になっています。
一面にアスファルトが敷かれている以外、何もありません。

ここが京成本線の駅として作られるはずだった、「江原台駅」の建設予定地です。
仮にここに駅ができていれば、京成本線の駅間距離は約2キロごとと、
規則正しく駅が配置されていたはずなのですが・・・


別角度から。
駐車場と住宅以外、何もありません。
周辺に商店等が無いことからすると、駅ができる予定があることをかぎつけて、
駅前一等地に店を作るといった行為をする人がいなかったことがわかります。


線路をみてみると、駅舎を作るために他の場所よりマージンがとられているのがわかります。
見る限り、鉄骨等の資材は放置されているだけで、
すぐに駅舎建築に着手できるというような感じではありませんでした。


線路をはさんで見える、冒頭のオランダ風車。


なぜ、「江原台駅」は作られなかったのか。
諸説ありますが、調べてみた結果、以下のような感じでした。

当初、駅間距離が約2キロごとという法則に従って、
京成電鉄側はこの場所に駅を作る気はマンマンでした。
しかし、駅建設用に取得した土地が小さかったのが悲劇の始まりでした。

この計画のために佐倉市が用地を確保した時点で、
駅のホームを作っても、6輌分しか停まれなかったのです。
8輌分停まれる土地を確保するまで建設を延期していましたが、
延期しているうちに住宅事情が変わり、
京成側としてもこの駅を作るほどの需要が無いと判断されてしまったようです。

しかし佐倉市はあきらめきれないのか、
そのまま駅建設用地として保有(=放置)したまま約20年経過。

現在は駅の近くに風車と佐倉ふるさと広場が作られ、
全国レベルでみても大規模な花火大会「国際印旛沼花火大会」が有名になってきたので、
京成側に「イベント用駅」として再度建築をもちかけたことがありました。

京成側からは、臨時駅だけでは採算がとれない、江原台だけではなく、
線路をはさんで向かいの田畑を区画整理して、そこをすべて住宅街に転換するぐらいしないと、
江原台駅は作らない、というような回答がありました。

従って、今後「江原台駅」ができる可能性が生まれるためには、
佐倉市が区画整理を行い、オランダ風車近くの田畑を潰して、
すべて住宅用途に変更する必要があります。
もちろんそれだけのことをするには多額の税金がかかりますし、
オランダ風車の景観も、近くに住宅街があれば台無しになる可能性があります。

私が調べた限りではこんな感じでした。

京成側が建設の意思を示したときに、
行政がさっさと土地をうまくやりくりしていれば話が進んだのに、行政の怠慢でそれがパーになった。
佐倉市のそういった事例は、土地のやりとりを適当に丸投げしたのが原因で引き起こした
「志津霊園問題」をはじめ他にもあります。

前にレポしたユーカリが丘も佐倉市。
民間が手を入れたらあっというまに巨大ホームタウンになったのに、
行政が手をつけると、発展の可能性があった江原台に駅が作られないというありさま。
都内まではさらに距離のあるはずの成田市では「公津の杜」で成功したので、立地が悪いわけではない。
この差は、主導した人の手腕の差にあるように見えます。

佐倉市はホームタウン造成地としてはポテンシャルが高いはず。
それをこの事例でわかるとおり、人口の増える要素がありそうなことを、
市みずからの手で断ち、ケアもしていない。
佐倉市は住宅地や交通に関する行政に、ちょっと問題があるんじゃないかなと思ってしまいます。

隣の八千代市に住む私が言うのもおかしいとは思いますが、
佐倉市にはもっとがんばってほしいかなと思いました。


以上、幻の江原台駅をお送りしました。

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