File 098 白井梨ブランデー株式会社

2009年9月、白井市にある一企業が破産手続きを受けました。
この会社の社長は、大赤字の新日本プロレスを立て直した実績を持つ、草間政一氏。
立て直して黒字になったとたん破産という、不可解な事件と現状をレポ。

千葉の風
【所在地】千葉県柏市塚崎1−8−1
【地図】googleマップ
【HP】千葉の風
【交通手段】バイク、車で16号大島田交差点で鎌ヶ谷方面へすすんで、ライコランド柏店の近く。

2010/01/23訪問

昨年9月の話になりますが、白井市にある「白井梨ブランデー株式会社」という会社が破産しました。

この会社はもともと、第三セクターにありがちな万年赤字企業でした。

「第三セクター」とは何か。
簡単に言うと、国と民間がお金を出し合って作った会社のことを言います。
会社としては利益があがればそれはそれでよいのですが、
業績が悪くても、周辺の住民の雇用を保持するために、税金を使って赤字を埋めてしまいます。
その結果、地域での産業が存続できるから問題視しない、そういうスタンスの会社が多いのです。
結果、業績をあげようと自ら動かないし、業績が悪くても地域の雇用を最重視するため、
国の赤字垂れ流しの原因の1つとして槍玉にあげられていたことは皆様もご存知だと思います。

さて、その万年赤字企業の「白井梨ブランデー株式会社」ですが、
白井市が2008年に社長公募を行いました。
その公募に立候補したのが、新日本プロレスを立て直した実績を持つ、草間政一氏だったのです。

草間氏が「白井梨ブランデー株式会社」の社長に就任したところ、
第三セクター企業のおそるべき実態を目にします。

○この会社のスタッフは工場長と作業員という構成で、作った商品をセールスする人が居なかった。
○同じく商品の宣伝をほとんどしていなかった。
○生産予測をしていなかったため、梨ブランデーだけで20年分の在庫をかかえていた。

ほかにもいろいろとむごいところがあるのですが、
草間氏は上に挙げた3つを中心とした改善に努めることになります。
草間氏が実施した改善点は何百個にものぼるので、簡単にまとめます。

○セールスマンを増やし、草間氏自身の知名度を生かした商品セールスを行う。
○企業としての組織を作る。経営計画を作る、報奨金を設定する等。
○梨ブランデーを使った商品開発をする。

結果、就任後わずか半年で前年比約130%の売上を挙げました。
その矢先に突然、白井市の新市長により破産手続きが行われてしまいました。

続きは長いので、ここで話を切って、今はなき「白井梨ブランデー株式会社」を見にいきます。



県道8号、通称船取線が国道16号と交差するあたりから、
枝道を抜けて進み、かなり人里離れたところで入口が見えてきます。



会社は破産していますが、看板はまだあります。


看板のところから霊園やらパークゴルフ場やらを抜けると、物件に到着。
こちらが「白井梨ブランデー株式会社」跡です。


さきほどの写真は工場部分で、
こちらの建物が事務所兼直売所のようです。


会社の碑。
第三セクターってこういうところだけ立派に作るから・・・。


建物の右のほうに階段があります。
その看板には・・。


2Fに売店があり、直売はもちろん、いろいろと食べられたようです。

さきほどの場所の説明文からわかると思いますが、この建物はかなり辺鄙なところにあり、
千葉の大動脈である国道16号が近くにあるにもかかわらず、看板等は全く無いし、
ここに到着できた人は皆無かと思われます。
そもそも直売を想定していなかったのかもしれませんが、
最初の計画の時点でいろいろとおかしいことがわかります。

話を戻します。

この当時金融不況が発生、大不況の真っ只中なのに、
草間氏を迎えた「白井梨ブランデー株式会社」は売り上げを順調に伸ばしていました。
草間氏は業績をさらにあげるために、
○アンテナショップ、つまり直売店を都市圏に作る。
○さらなる商品の開発を行う。
そのために運転資金としてお金を借りて、船橋にアンテナショップを開店しました。
白井市はお金を出さないので、このときのお金を借りたときの保証人は、草間氏自身でした。
つまり、倒産したら社長が借金を背負うことになります。

そして、運命の9月。

白井市は突然、「白井梨ブランデー株式会社」に対し破産手続きに入る方針を示しました。
実際、「白井梨ブランデー株式会社」は会計上は黒字でしたが、
社長自身が運転資金を借りているため、実態は赤字ではないかという指摘があったわけです。
運転資金がなければアンテナショップは出せないし、新商品は作れない。
社長の立場からして、それは会社をなんとかギリギリで続けるためのお金じゃなくて、
業績をさらにあげるためにお金を借りたとしか思えないのですが、
白井市は赤字扱いとして、破産したほうがよいという選択をしました。

ここで重要なこと。

白井市は草間氏が社長になった直後に選挙が行われ、新しい市長に変わりました。
その市長が当選前に掲げていたマニフェストに、
「白井梨ブランデー株式会社」を清算することが掲げられていたのです。
草間氏が就任するまえの業績を参考に、マニフェストを作ったことは誰もがわかりますが、
業績がどうであっても、市長に就任したらマニフェスト達成のために潰す予定だったのです。

かくして、草間氏が就任後わずか半年で黒字化した、
「白井梨ブランデー株式会社」会社は破産させられてしまいました。

そのため草間氏は、市から公募で雇われた社長なのに、
会社の運転資金として借りたお金がそのまま借金となってしまいました。
現在、会社の強制破産の件と、背負った借金については白井市と係争中とのことです。


以上が「白井梨ブランデー株式会社」の顛末です。
要点だけをぬきとって簡単に説明したつもりですが、
この事件について大まかに理解いただければ幸いです。


さて、この草間氏、現在何をやっておられるかといいますと、
ライコランド柏店(バイク用品店)の近くにて「千葉の風」という、
前述のアンテナショップのようなものを経営しております。


ライコランド柏店から鎌ヶ谷方面に200mもしないところに、ごらんのような建物があります。
この店は去年の12月1日にオープンしたそうです。
最初は地元の人に、怪しい宗教団体ではないかと思われていたそうですが、
最近では地元での知名度があがってきているようです。



店内に入ると、いわゆる「道の駅」にあるような商品が陳列されています。
銚子のぬれ煎餅やサバカレー、八街のピーナッツ、びわサイダー、千葉の地酒等いろいろあります。
それらの商品に混じって並んでいるのは、ここの売りである梨を使った商品群。
もちろん「梨ブランデー」も販売しています。

お客さんにつきっきりで、商品について出自から味などを丁寧に説明している1人の男性。
この方が、草間氏です。


草間氏は借金を背負っていることもありますので、店の内装などに金をかけられないようです。
ほぼ手作りで、なんとか販売ができる状態までもってきたそうです。
壁には自身の売りである知名度を生かすため、プロレス関連の写真や、
「白井梨ブランデー株式会社」建て直し時の記事の切り抜きなどがあります。


予想外にお客さんが入っていたので、かごに商品を入れながら壁の記事をみてヒマつぶし。
客足が落ち着いたときに1対1でお話させていただきました。

会社倒産から今にいたる経緯、梨を使った商品の取り扱いについて、千葉への情熱、
「千葉の風」運営に関する姿勢など、いろいろお話をさせていただきました。
黒字再生のプロということで、もっと厳しいイメージがありましたが、
おもったより温和で、人なっつこい雰囲気にビックリしました。
新日本プロレス社長時にメディアにたくさん露出しているのに、
こんなHPのネタのために訪れた私に、懇切丁寧に対応する姿勢に頭がさがります。
彼を慕う人が多いのも不思議ではないと思いました。

とまあ、こんな場所です。
1人のプロレスファンとして普通にお話できたのが、非常にうれしかったです。
草間氏は当面このショップに常駐しているそうで、アポイント無しでもお会いできるそうです。
プロレスファンなら非常にオススメスポットだと思います。

そして、白井梨ブランデー株式会社の件。プロレスファンとかという立場は関係なく、
草間氏にとって良い結果がでることを強く願っています。くじけずにがんばってほしいものです。

以上、白井梨ブランデー株式会社をお送りいたしました。
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