File 086 トージスルーム

日本におけるモータリゼーション黎明期に、
風のように現れ、去っていった1人の天才がいました。
その天才が乗っていた車と遺品が展示されているとのことで、訪問してきました。


ザ・チャペル・オブ・アドレーション
【所在地】千葉県市川市新田1−16−28
【地図】googleマップ
【HP】ありません。
【交通手段】市川駅から徒歩で8分ぐらい

2009/10/25訪問

今週から幕張にて、東京モーターショーが行われております。
しかし、未曾有の不況により出展企業が激減、寂しい状況になっているそうです。

そこで、日本の車の歴史をさかのぼって、車の持っている魅力に触れられる、
そういったスポットが市川にあるそうなので、訪問してみました。


市川駅を北口に出て、千葉街道を東に歩いていきます。


気持ち8分ほど歩いていくと、白い建物が見えてきます。
こちらが今回の物件になります。


この教会の名前は「ザ・チャペル・オブ・アドレーション」と言います。

早速入ろうとすると、同年代とおもわしき男性が教会から出て行くところだったので、
この物件にある「ある物」について尋ねてみました。
しかし、この男性の方はそれについては詳しく知らないが、
この教会が、「伝説の天才」と非常に関係しているということはご存知のようでした。
といいますか、知っていて当たり前のようでしたが。
この日は日曜日なので礼拝の真っ最中でしたが、もうすぐ終わるとのことで、
礼拝に出ている「伝説の天才」のお姉さまを紹介していただけることになりました。

談笑しながら礼拝が終わるのをドキドキしながら待っていると、
上の階からぞろぞろと人が降りてきます。

そして、「伝説の天才」のお姉さまにお会いすることができました。
彼女の名前は浮谷朝江さん。

もうおわかりでしょうか。

ここは、船橋サーキットで行われた伝説のレース「全日本自動車クラブ選手権」を優勝、
そしてわずか15ヶ月の活動のみで、はかなく散っていった伝説のレーサー、
浮谷東次郎氏の生家なのです。


彼の経歴を簡単に。

父が車好きの家庭に生まれ、15歳で東京から大阪まで今で言うモペットで横断。
「がむしゃら1500キロ」という私家版の本を作る。(のちに文庫で出版)
その本ををホンダの社長の本田宗一郎に送って知り合いになりたいと伝えたところ、
息子と友人になったという。(ホンダ車のチューンメーカー、無限の社長さんです)
その後、アメリカに留学していたところ、日本で始めてレースイベントが行われるということで帰国。
船橋サーキットで行われた「全日本自動車クラブ選手権」にヨタハチで出場。
2位争いからスピンしてピットに入るも、そこから圧倒的なスピードで追い上げて、
最後にはトップに立って圧勝するという走りで注目を浴びることになります。
その後も出場するたびに優勝するが、鈴鹿サーキットで練習中、
走行コースに居た2人を避けようとしてクラッシュ、そのまま亡くなってしまいました。

彼の人生は文庫や漫画などにもなっていますので、興味がありましたらぜひ。
(漫画は「栄光なき天才」11・12巻です。)

話を戻します。
この市川の生家であるこの教会の中に、彼がレースに使用していた車が展示してある、
「トージスルーム」なるものが存在するということで、ここを訪問したわけですが・・・・。

今は「トージスルーム」は存在しないとのこと。

な、なんだってー!?


5年ほど前から「トージスルーム」として展示している実態は無いようで、
一応東次郎氏の車は倉庫に置いてあり、たまに見せることがあるというレベルだそうです。

しかも、肝心の車は別のところに展示しているため、今は無いとのこと。
とりあえず朝江さんに倉庫になっているところをご案内いただけることになりました。


教会の裏の敷地。
風格のあるレンガ造りの建物とともに、彼の車が通れるように作った道が続きます。


十字架がマッチングしている面白い灯篭。
資産家だけあって、この周囲の建物は非常に美しいものばかり。
石畳の道を歩いていくと、「トージスルーム」があった建物に到着しました。


本来ならここに2台の車が置いてあったようです。
左のほうに東次郎氏が愛用していたモペット「クライドラー」があります。
2台あり、もう1台は車とともに別の場所で展示されているそうです。


この部屋の片隅には東次郎氏のトロフィーや関連書籍等がおいてあり、
「トージスルーム」が現役の時は、車とあわせて展示されていたようです。

朝江さんのお話を聞いていると、今日中にその車をみたくなり、
教会の行事にあわせて朝江さんと別れ、車が展示されているという場所に向かいます。






着いたのはここ。お台場のヴィーナスフォート。


ヴィーナスフォート内に、トヨタが監修している総合自動車パーク「MEGAWEB」の一部があり、
その1コーナーとして「ヒストリーガレージ」があります。
その中に企画展として、浮谷東次郎展をやっているそうです。


入ってすぐのところに・・・

おお、ありました!!!!!!



浮谷東次郎氏が実際にレースで使用した車の1つ、ロータスエラン。


そのレースのリザルト。
ライバルである生沢徹は2位。
高橋国光とか長谷見昌弘とか砂子塾長の父親とか後のビックネームが並んでいます。


こちらは伝説の「全日本自動車クラブ選手権」で使用した車、ヨタハチ。


そのレースのリザルト。
2位にはやはりライバル生沢徹、3位破天荒な人生を歩んだ田中健二郎、
5位に、ベストモータリングのガンさんこと黒沢元治。

こうしてみると昔のレースの車のラインナップって自由で良いですね。


現在の船橋オートレース場がある場所に存在した、
「船橋サーキット」のコースレイアウトです。
左回りで、中のくねくねしたところも走るような感じです。
現代サーキットを基準として考えると、ストレートに続くシケイン?が凶悪すぎます。


伝説のレースとなった「全日本自動車クラブ選手権」のトロフィー。
JAFのロゴが輝いています。

この展示をいつまでやっているわかりませんが、常設展示となっておりますので、すぐには終了しないはずです。
この伝説の車に興味がございましたらぜひ見ていただきたいと思います。

わずか23歳で散った天才レーサー、浮谷東次郎氏。
彼の本を読んでみるとわかりますが、やること成すことすが、同年代の自分と重ねると絶対にできない。
そういう単純な比較だけでも、間違いなく本物の天才だと思います。
今日こうして彼に関する物件を回ってきましたが、より一層彼のファンになりました。
この物件を訪問する前から持っていた関連書籍をもういちど読み直し、
彼のことを永遠に頭の中にとどめておきたいと思いました。


以上、トージスルームをお送りいたしました。
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