番外編 012 星山温泉

【交通手段】逗葉道路終点から15分程度。(迷い時間は考慮せず)

2013/09/08 訪問

ある温泉サイトの方が、関東にある特異な温泉2つについて、こう評している。

「西の星山、東の正木」

「東の正木」は当HPでもレポされている「File 116 正木温泉 」のことであり、
一般的な方には近寄りがたい雰囲気を持つ温泉でした。
それと比較されるレベルというのは、相当にアレな物件であることが想像できます。
「西の星山」は対岸の神奈川の葉山にあると知り、機会があれば行ってみようと記憶にとどめていました。


そしてこの日、天気は大雨予報。 しかし、午前中は降る気配がしない。
夕方ギリギリまで外出できそうなので、車で適当に走ってみようとしたところ、
星山温泉の名前が思い浮かぶ。そうとなれば出発!ということで葉山まで向かいます。



千葉から首都高を通過して三浦半島を目指します。
もちろん金谷からフェリーで東京湾をわたっても、アクアラインでもよいと思います。


逗葉道路(逗子〜葉山を結ぶ有料道路)の料金所を通過後すぐに信号がありますが、
信号を左にまがります。
まがった直後、ものすごい長い「南郷トンネル」に入ります。
トンネルを出るとすぐに交差点があり、そこを右折します。


右折後またすぐに交差点「水源地入口」があります。
ここを左折します。


細めの2車線道路が続いていますが、1キロ程度走っただけで、
1車線のみになり、だんだんと行きかいが困難な道になってきます。

それでも道なりに進んでいくと・・・


なにやら怪しいオブジェの集合体が見えます。
グーグル地図によると、ここは「穴守稲荷神社」と呼ばれるようです。


穴守稲荷神社。
鳥居をよくみるとプラスチックの筒を赤く塗ったものでした。



そしてすぐ横のバラック小屋。

大きく「稲龍大観音」とあり、その下に星山温泉とあります。
この近くで間違いなさそうです。



達筆な印象をうけますが、いざ読むと視線が微妙にひっかかる文章。
最後に「稲龍神山スポーツランド」とあります。

とにかくこの周囲に物件があることは確実なので、
文明の利器スマートフォン&GPSでどうやって行くか調べてみるわけだが、
車で現地を走ると、地図が微妙にマッチしていない。
しょうがないので車を適当な場所に停めて、徒歩での探索に切り替えます。



調べてみると、どうやらこの脇道から入る模様。
進んでみます。



車が通るには無理な道が続きます。
バイク、自転車のみ通過可能といったところ。


しばらく進むと、右手に住宅が見えますので、ここを右に曲がります。
この先に道があることはgoogle地図ですら掲載されていませんので、通り過ぎないように注意してください。


じめじめした空気の中、のぼり坂が続きます。
途中に何かの廃材が落ちているかと思ったら・・・・


営業時間が書いてありました。
ここに何があるか知らない人だと、何の営業時間かわからんし。
しかもこれ、年末年始の臨時休業じゃんか。今は9月だぞ・・・

でもとりあえずこの先に目的地があることは確実。ワクワク。



さらに登っていくと、突然横をカブに乗ったおっちゃんが急な坂を軽快にあがっていく。
なんだろう?と思いつつ、自分もつられてペースをあげてのぼっていきます。


おっ!何か見えてきた!



ようやく到着。
ここが「西の星山」と伝わる星山温泉か・・・。
見える建物はすべてトタン屋根のバラック小屋。

そして、さきほど横を抜けていったバイクに乗っていたのは、ここのオーナーでした。
どうやらさきほど曲がってくるところにあった家の前に、センサーが仕掛けられていたようだ。

ここを訪れる人の性質(温泉マニアだとか、変わったところが好きだとか)
を見抜いているかのように、こちらから言わなくても、聞きたい情報をどんどん話してくれます。
そして、不況による経営失敗的な話でもDIY自慢でも、
最後には自虐的に「ハハハ」と笑います。なんか面白いこのオッチャン。


営業時間。

とりあえず入浴料500円を支払うと、補助券がもらえます。
10枚ためると無料。
ここに10回通うツワモノがどれだけいるのだろうか。



入浴料を払うと、オーナーは瓦礫の山から木材を運び出し、
窯に着火して投入します。
ここは熱い温泉が沸いているタイプではなく、
冷たい「温泉に向いている液体」が湧出しているタイプの場所で、
それを湯船にためてから沸かすようになっています。

ちなみに今回入った浴室とは別にもう1つあり、
そちらはボイラーで沸かすタイプだそうだ。
なので、一応男湯・女湯に分けることは可能のようです。



火はみるみる大きくなり、
周囲のトタンを巻き込んで炎上しています。
おいおいコントロールできてんのかこれ・・w



お風呂を沸かしている間、入浴場のほかにある2つの建物を回ってみます。
こちらは「大広場」。



大広場の外壁。
例によってお経のような規則正しさのある筆跡。



大広場入口。

入口は開いていますが、直後に急な段差があり、
飛び降りるように下りないと部屋に入れません。
こりゃおじいちゃんおばあちゃんが利用するのは無理だわ。



大広場では数年前は無料カラオケがあり、にぎわっていたようだ。
しかし現在は・・・ ご覧のとおり。

定期的に片付けていれば今も使えていそうな気もしなくはないが、
なんでこんなにガラクタを運びこんじゃったんだろう。



ここは現役の休憩所のようだが・・
正直足を踏み入れるのをためらう雰囲気が。
なんというか、廃村によくある、
生活感がある時代で突然止まったような、そういう感じ。


お風呂が沸いてきたようなので、浴場に向かいます。


入り口。
すでにチープな浴場が見えています。


板張りの床に、ステンレスの浴槽。
温泉にはつきものの富士山の絵、謎の時計台の絵。美しい(真顔)




風呂の蓋をめくると、そこには透明なお湯がみえました。
濁っている感じはしないが、まとまった大きなゴミのようなものが浮いています。
近くに網があるので、それで掬ってくださいというような感じです。

手でお湯をすくってみると、びっくりするぐらいヌルヌルヌメヌメ。
スライムとまではいわないけど、
房総特有の黒湯をはるかに越えるぬるぬる感があります。
こいつは良さそうだ!


そのへんにたくさん飛んでいるブヨを追い出してカーテンを閉めて脱衣、いざ入湯!!!!


熱っちい。


浴槽隣にある、源泉の水がたまっているバケツから、
なんどか足してかきまぜるも、あまり効果がない。
そりゃ盛大に炎をたちのぼらせていますし。

数分全裸のまま冷却を試みた後、足浸かり、半身浸かりを繰り返すこと数回。
ハイパワーの火力にはらちがあかないので、意を決して、全身一気に入湯!


あふれるお湯。


ぐぬぁーーーーーーーーーーーーーーーー あっち。

全身入浴はほどなく終了。地味に夏だったことが響き、あまり長く入れませんでした。

でも半身でもすぐわかるぐらい、お湯はイイ。
正直、こんな泉質の温泉って他にないと思います。
ここを訪れる温泉マニアが納得するのもよくわかる気がしました。


お風呂からあがると、この場所の歴史をオーナーの口から語られ始めました。

昔この場所は「稲龍神山スポーツランド」という、アスレッチックを中心とした娯楽施設で、
外にある稲荷神社等も父と兄と現在オーナーの3人が中心で作ったそうだ。

しばらくはアスレチックス、トランポリン、ケーブルを滑走するヤツが人気で、
一時はカラオケ場、キャンプ場もやったりしたそうだ。
しかし時代とともに、メインのアスレチックスなどの遊具を目的とした入場者が減ってしまいました。
それと同時期、平成元年にオープンした「星山温泉」がそこそこ人気が出たので、
他のものはすべてやめて、温泉のみの営業となっているそうです。
そして今の施設は、その平成元年のものをそのまま使っているそうだ。


聞き続けるうちに体の熱さも冷えてきて、ちょうどよくなったところで退却。

とまあ、こんなところでした。

「西の星山、東の正木」 。この言葉に偽りなし。

ただ、この2つをレベル的に比べると、
星山のほうが訪問難易度が高いと思います。

正木温泉は以前のレポの通りですが、ある程度のレベルの衛生は保っています。
それに比べ星山温泉は今にも崩れそうで掃除していなさそうなボロボロの小屋。
そして人を選ぶ独特の泉質、難解な道中。

どちらも訪れたことがなく、これから訪問してみようと考えているのであれば、
先に千葉の「東の正木」のほうを訪れてみてください。
その上で、こちらの「西の星山」を訪れてみてください。
比べられる理由などが身にしみてわかると思います。



最後に・・・
現場周辺は非常に道が難解なので、簡単なマップを。

一番上の神社のところが、プラスチック鳥居の稲荷神社。
現場周辺の目印はこれ以外に全くありませんので、訪問の際はこれを目標にしてください。

で、稲荷神社についた後ですが、すぐ向かいの道は封鎖されており、通れません。
神社からちょっと南へ進むと、右手に車が止められるスペースがあるので、
そこに車をとめて、地図の通りに歩いていくのが良いかもしれません。
他の温泉サイトにあるような車で行くルートは道が狭いので、脱輪等の安全性を考えると正直おすすめできません。
自分の技量に合った道を進んでください。

以上、星山温泉をお送りいたしました。
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