番外編 009 平家の隠れ里

【交通手段】鬼怒川温泉駅からバスで1時間。

2012/05中旬 訪問

NHK大河ドラマで「平清盛」が放映されています。
残念ながらドラマの評判はよろしくありませんが、
「平家物語」は今が旬の題材ではないでしょうか。

私は土曜日、祝日が休みでなくなりましたので、GWも出勤していました。
ですが、5月末に久々に連休をいただけましたので、
栃木の奥地「湯西川温泉(ゆにしがわおんせん)」周辺を訪問してみました。

湯西川温泉周辺は「平家の里」と呼ばれています。
源平合戦の大敗北により、平家は滅亡したことになっておりますが、
平家側で戦い、敗北した際に生き残った人々は山奥に逃げ延びて、
隠れ里を作り、今日までひっそりと生きていました。

もともとそういった伝承のある場所は全国各地にありますが、
湯西川は一味違うのです。
何が違うかというと・・・

○他の場所と違い、平家の正統な血縁者が落ち延びたことがわかっている。
○武士の技術を生かして進化したハンター、「またぎ」という仕事がある。
○栃木では随一の泉質を誇る温泉がある。

そして・・・

○B級スポットとして名高い「平家狩人村」がある。


というわけで、YBRで下道ツーリングしてきました。
ほぼ高速道路状態の国道新4号をガンガン飛ばし、栃木に到着。
そこから霧降高原に向かいます。


YBR in 霧降高原。
この日はすばらしい天気。
牧場が見える道を走り、第一の目的地へ急ぎます。

目的地が近づくにつれて道路舗装がぼこぼこになり、
景色は高原から山奥の密林に変化していきます。

そして到着したのは・・・


霧降高原から女夫渕(めおとぶち)温泉方面に走っていくとある物件。
店名は「またぎの里」。
なんでも、またぎ料理がお手頃価格でいただけるという店で、
そんなにがっつり食べようとは思わないけど、
軽く味わってみたいという人にはうってつけの店ではないでしょうか。


店の前では串焼きの販売を行っています。
ごらんの通り、都会ではあまり馴染みのない食材ばかりです。

いずれも串焼きで、

熊   800円
山椒魚 400円
沢蟹  200円

を頼み、店内で食べることにします。



銀皿に乗せられて出てきたのはこんな感じ。




やっぱり山椒魚が気になります。
見たまんまですね。


パクパクパクパクパク・・・・・


それぞれの感想はというと、

熊の肉・・・
歯ごたえは、豚バラの焼き串みたいな感じ。味は牛肉っぽいです。
獣の味というか若干臭みと苦味がありますが、正直美味いです。

山椒魚・・・
ビジュアルがダメな人にはきついとおもいます。そのまんまなので・・・
食べてみると、火がかなり通っているためか、
うなぎの尻尾部分、シシャモあたりと似た歯ごたえ。
味はタレの味が強くて、これが山椒魚だ!というような特徴的な味は感じられませんでした。
ほのかに山椒のピリリを感じたような気がしますが、たぶんプラシーボでしょう。

沢がに・・・
身がまったくなかったので、殻をバリバリ食べているだけ。
最低でもえびせんチックなスナック風味がすると思ったが、そう甘くはなかった。
一番普通に食べられそうなものだと思ったのですが、今日食べた中ではオススメできない。

というわけでプチまたぎ料理を堪能した後、今回の目的地、湯西川に向かいます。
霧降高原の分岐に戻り、「土呂部」方面の看板に従って県道249号を進んでいきます。



土呂部周辺。

この先の道は冬期閉鎖されているそうですが、それほど路面はひどくなく、
なかなかい面白い峠道が続きます。今回は原付二種なので楽しいですが、
大型だとストレスがたまるのではないかと思います。



ペースはそこそこ飛ばしているのですが、30分ほど連続走行してようやく湯西川温泉に到着。
霧降高原以降からほとんど集落が見られず、ここが隠れ里であることを認識させられます。

ここは温泉街の中央あたりを流れる川周辺。
この画像の左奥あたりに源泉があるのですが、この温泉は外から丸見えの露天風呂ばかり。
なのでこんな画像になっています・・・

ひとまずはホテルにチェックインして荷物を置き、物件を回ることにします。

この湯西川温泉周辺が平家の隠れ里であることは前述のとおりですが、
「平家の隠れ里」を堪能する観光施設が2つあります。


1つは、「平家の里」。
こちらは20年前に作られた物件で、
村内の古民家を移築して、隠れ里の雰囲気を再現したものです。
園内はこぎれいで、平家の元上流階級が田舎で不便であっても、
元貴族っぽい生活水準をなんとか保って生活していたという感じでしょうか。


もう1つが、有名B級スポット、「平家狩人村」。
前者がこぎれいでメディアを意識していて、
温泉のついでに寄っていく、というライトな観光客向けであることに対し、
ここは山奥の密林の中での、血生臭い狩猟生活のイメージ推し。

同じ場所の紹介であるにもかかわらず、
まったくイメージが違う、不思議な状況を生み出しています。


まずは「平家の里」のほうに行ってみます。


「平家の里」は湯西川温泉の中央街からちょっと歩けば行けます。
なので、昼の温泉あがりに浴衣でちょっと歩くのには良いのではと思います。

門をくぐり、左にある入口で500円払います。



こんな感じ。
茅葺の民家に、上品な平安時代の貴族風の庭園の雰囲気が続きます。

ぶっちゃけこれは「隠れ里」ではないでしょうね。
平家の栄華が続いていた頃の優雅な生活アピールと、
地元の古民家を並べているだけで、昔の雰囲気を楽しむだけの場所。
当時の生活の再現なんて、はなから考えていないと思います。


茅葺の建物の中の一部はこんな感じのマジメなものもあれば・・・


金屏風やら鎧やらを展示している建物もあります。
「平家の里」というより、「平家博物館」って感じ。
よく見ていないですが、たぶんこれらは本物ではないでしょうね。


平清盛公じゃ〜
この像の前でマツケンというと、松平健のほうを思い出してしまう・・・


入口横にある「平家塚」。
この隠れ里に逃げてきた平家の生き残りは身分を隠すために、
着ていた鎧、財宝やらをここに埋めて、
隠れて生き延びることを決意した、そんな感じの場所です。


とまあ、こんな感じです。
正直、面白くなかったです。
ま、同じ栃木の日光江戸村なんて1人4500円もするし、
それと比べると、500円でタイムスリップできるのなら安いのかもしれません。

しかし。

ここからそう離れていないところに、あるわけですよ。アレが。
そう、「平家狩人村」が・・・


「平家狩人村」は、平家の里から郊外に1キロほど先。
結構山の中に入ってしまうので温泉街からの徒歩では無理。
車かバイクでの移動となります。一応送迎バスもあるみたいです。

で、こちらが入口。
別荘地のオシャレペンションの入口って雰囲気。


入口で雰囲気が急変。
これが平家狩人村入口です。

こちらも入場料500円。
ただし、ネットで見る限り値段変動が激しいようで、
今回行ったとき、たまたま500円だっただけかもしれません。

私と一緒に駐車場に入った乗用車が、入口から中をちょっと見ただけで、
入場せずに去っていきました。
何か負のオーラでも出ているのでしょうか。

とりあえず入場券を購入し、入村。



最初の建物に貼ってあった村の全体地図。

全部回ればわかりますが、6割ぐらいしか合っていません


最初の建物に突撃します。
全部回ったから言えるのですが、この建物だけ比較的中がきれいです
管理者がここの目玉だと自覚しているということでしょうか。


入ると・・・おぉ?結構スゴイ!

またぎのターゲットになる動物の剥製と、
等身大のまたぎ人形が飾られています。
草木もうまくセットされていて、なかなか良い雰囲気です。

ここって結構マジメなところなのか?


一番館を出て辺りを見回すと、
当時のマタギ的な生活をしていた人の集落が、雰囲気とともに再現されています。
たしか平安時代の普通の庶民は、竪穴式住居に住んでいたような記憶があるので、
時代考証的には合っているはずだが、微妙にミスマッチな感じ。



とりあえず順番に回っていきます。
ほとんどの建物の入口にはこんな感じで説明が書いてあります。


中に入るとクマを解体していたり、骨が並べられていたり。
おっちゃんの人形が妙にリアル


ググってもみつからなかったので、貴重な写真っぽい。
なんだか石鹸みたいです。


村内にはお客さんが多いと、行き交いができない細い道ばかりです。


村長一家だそうです。

村長は周辺にどういった獣がいるかとか、草木の調査をして住民に教えていたそうです。
現代社会の市長より体力を使う大変な仕事っぽいです。


最近はレッドブルやらバーンやらエナジードリンクが人気ですが、
当時の人はこれで翼を授けられていたのでしょうか。


集古館とのこと。


入ると棒を持った村一番の美人が出迎え・・・・



じっと見ていると精神が崩壊しそうな視線です。



ド グ ウ ( レ プ リ カ )

他にも絵が飾られていたりするのですが、
ほとんどの絵がやぶけており、
さらに裏の窓が割れていて、そこから外へフリーダム展示をやらかしています。

他の展示物もお世辞に状態はよくないというか、扱いが雑なので、
1つ1つを見ていい仕事してますね〜なんて呻くより、
観ているものに本当に価値があるものなのか心配になってきます。


ティンティンです。



この建物はズバリ「皮の店」。

全部ではないですが、プライスタグがついている毛皮があります。
画像左下の、緑のひもで縛られた熊の毛皮をみてみると、70000円と書いてありました。
さきほど熊の肉を食べたわけだし、定期的に熊が獲れるのは間違いないはずですが、
熊の毛皮は一般的にめずらしいものであるには違いない。

問題はこの村に置いたら誰も買わないと思う・・・
道の駅で売ったほうがよさそうな気がします。


夫婦木観音だそうだ。
その矢印が指す方向は・・・冒頭の村案内図では「舞台」。

舞台を潰して出来たものはどんなものかというと・・・


ティンティン!

ちなみにお金は入れませんでした。


隣の「食堂」に入ってみると、休業中のようです。
というか、集古館と同レベルの怪しいコレクションに占領されてしまったようです。

日本の古美術だけをコレクションしているのかと思いきや、
中国の貨幣とかがあって統一性がありません。


屋外の休憩所。

ここまで書きませんでしたが、ここは非常に虫が飛んでいます。
なので、屋外での休憩はオススメできません。

さきほどの「平家の里」では、虫がいる事自体まったく意識しないで見ることができたのですが、
距離も1キロちょいしか離れていないここは、本当に虫を意識しながら歩いていた感じでした。
下手すると足元に蛇とかが居たかもしれない。
普通にテーマパークを回るようにあるいているのに、いつ蛇や蜂に遭遇するかわからない。
そんなマタギならではの、日々の生活でも緊張感も味わえる・・・いらない要素でしたね。


村案内図を見て回っていないところを確認して行ってみる。


自然植物園=ただの家庭菜園みたいな感じ。

ミニ動物園=が吼えていた。他の生物は居ない模様。


平家の里は隠れ里なので、外に知られないように鯉のぼりをあげない、
鳴き声でバレるのを防ぐために鶏、犬を飼わない風習があると、平家の里のほうでは書かれていたのだが。


全部回ったのを確認して、「平家狩人村」を後にします。

最初の建物の剥製やらが思いのほか立派だったので、期待を裏切られたかと思いきや、
一気にマタギ展示編は完結、コンディションの悪い古美術、大量の珍宝を観ることになるとは。
世間から隔離された空間であるがゆえ、こういう展示物ばかりになってしまったのでしょうか。

そして平家狩人村は、平家の生き残りということをほとんど意識していません。
それもそのはず、平家の頃のものは今はほとんど残っていないので、何も見せようがないはず。
見せようとすると、レプリカみたいにリアリティの無いものを見せている「平家の里」みたいになってしまう。
それを考えるとリアル方面で攻めた「平家狩人村」は正解だとは思うが、何かが違っていたようです。
その何かが分かれば苦労はしないのですが、こうしてみていっても、それが何だかわからないのです。
観光業って難しいものです。



最後にパンフレットの地図。
「平家の里」がありません。
平家塚が書かれているので、平家の里が作られる前の地図なのか、あるいは意識して隠したのか・・・

この後は湯西川温泉に戻り、リフレッシュ。
温泉は泉質が非常に良いと感じましたし、近くの鬼怒川温泉と比べると宿代が安いと思います。

交通費はともかく、旅行先での出費を抑えてB級スポットを巡るついでに、
良い温泉でリフレッシュしたい!というのであれば、ここはおあつらえの物件。
都内なら日帰りでも行けると思いますので、気になったらぜひ行ってみてください。

そして感じてみてください。
B級スポットとして定義されるのは、ここのような物件のことを言うのだと。

以上、平家の隠れ里をお送りいたしました。
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